事例でみる相続:相続人の一人が行方不明で、遺産分割協議が進まない場合

相続手続きでは、すべての相続人が遺産分割協議に参加し、合意することが求められます。しかし、相続人の一人が行方不明で連絡が取れない場合、遺産分割協議を進めることができず、相続手続きが滞ってしまいます。このような状況は、他の相続人にとっても精神的・経済的な負担を増大させます。

解決策

① 不在者財産管理人の選任

行方不明の相続人がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。不在者財産管理人が選任されると、その人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加し、相続手続きを進めることが可能になります。

手続き内容

家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立を行います。選任された管理人が行方不明者を代理して協議に参加します。

必要な書類

不在者財産管理人選任申立書

申立人の戸籍謄本

行方不明者の戸籍謄本

被相続人の戸籍謄本

書類の入手先

家庭裁判所、市区町村役場

② 公示催告による相続人の捜索

家庭裁判所に公示催告を申し立て、行方不明の相続人の捜索を公示します。一定期間が経過しても連絡がない場合、失踪宣告を受けることができます。

手続き内容

公示催告を行い、行方不明者に対して通知を出します。通知期間が過ぎても応答がなければ、失踪宣告を申し立てることが可能です。

必要な書類

公示催告申立書

行方不明者の戸籍謄本

被相続人の戸籍謄本

書類の入手先

家庭裁判所、市区町村役場

③ 失踪宣告の申し立て

行方不明者が長期間にわたり連絡が取れない場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、行方不明者は法律上死亡したものと見なされ、相続手続きを進めることが可能になります。

手続き内容

失踪宣告の申し立てを行い、家庭裁判所の判断を待ちます。失踪宣告が認められた後、相続手続きを進めます。

必要な書類

失踪宣告申立書

被相続人の戸籍謄本

申立人の戸籍謄本

行方不明者の戸籍謄本

書類の入手先

家庭裁判所、市区町村役場

予防策

① 定期的な家族間の連絡と情報共有

家族間で定期的に連絡を取り合い、情報を共有することで、行方不明者の発生を未然に防ぐことができます。特に、高齢の家族や遠方に住む家族とは定期的に連絡を取り合う習慣をつけることが重要です。

② 事前に遺言書を作成しておく

被相続人が遺言書を作成しておくことで、相続人の所在が不明な場合でも、遺言に基づいて遺産分割を進めることが可能になります。遺言書には、財産の分配方法を明記しておくとよいでしょう。

手続き内容

遺言書を作成し、公正証書遺言の場合、公証人役場で手続きを行います。

必要な書類

遺言書

被相続人の本人確認書類

書類の入手先

公証人役場、市区町村役場

③ 行方不明時の緊急連絡先の確保

家族や親族間で、行方不明時の緊急連絡先を共有しておくことで、迅速な捜索が可能になります。各相続人の住所や連絡先を把握しておくことも重要です。

まとめ

相続人の一人が行方不明で遺産分割協議が進まない場合、不在者財産管理人の選任や公示催告、失踪宣告などの手続きを通じて問題を解決できます。家族間で定期的な連絡を取り合い、情報を共有することで、行方不明者の発生を未然に防ぐことが可能です。事前に遺言書を作成しておくことも、有効な予防策となります。専門家の助言を受けながら、適切な手続きを進めることで、相続手続きの円滑化を図ることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました